抄録

マウス臼歯歯根形成におけるヘルトヴィッヒ上皮の組織構築と運命
Architecture and fate of Hertwig’s epithelial cells in root formation of mouse molars
青柳暁子、島津徳人*、田谷雄二*、内川喜盛、佐藤かおり*、青葉孝昭*
日本歯科大学 生命歯学部 小児歯科学講座
日本歯科大学*  生命歯学部 病理学講座

【目的】
マウス臼歯にみられるヘルトヴィッヒ上皮鞘(HERS)の構築・分断化のプロセスと歯根形成・萌出に関わるHERS・歯小嚢細胞の相互作用に働く分子シグナルを検証した。
【材料と方法】
生後1〜35日のICRマウスを使用し、臼歯歯胚の形態形成と顎骨内位置移動をμCT法で確かめた。下顎第一臼歯の歯冠部から歯根形成端に至る連続薄切標本を作製し、歯根形成と上皮間葉相互作用に関わる分子局在を免疫組織化学でマッピングし、HERS構築と分断化をサイトケラチン免疫染色による組織立体構築で追跡した。
【結果および結論】HERS構築に導く細胞間接着にはE-Cadherin、CD44、Connexin 43が関与しており、TGFβ、IGF、Wntを介した情報伝達回路がHERS・歯小嚢細胞との相互作用に働くと推定された。シート構築直後のHERSでは、エナメル上皮との境界部から細胞接着分子の発現低下とGAP結合の消失による分断化が惹起された。HERS分断化が進行した歯根表面では、E-Cadherin発現を保った上皮細胞集団が歯質表面に接して散在していたが、個々に分離した上皮細胞は歯小嚢腔に遊離した。シート構造から遊離した上皮細胞は間葉転換を辿るとともに、一部は上皮遺残として形質発現あるいはセメント基質への埋入など多様な運命を辿ることが示唆された。本研究は科研費(課題番号17591929)の補助を受けた。